「人間修行」(安部公房)
行き着く先はやはり「人間とはなんぞや?」 「人間修行」(安部公房)(「安部公房全集007」)新潮社 あまりにも目立たない存在であるため同僚から「ヒラメ」と綽名されている平木は、ある時、自身に取り憑いている幽霊の姿が見える...
行き着く先はやはり「人間とはなんぞや?」 「人間修行」(安部公房)(「安部公房全集007」)新潮社 あまりにも目立たない存在であるため同僚から「ヒラメ」と綽名されている平木は、ある時、自身に取り憑いている幽霊の姿が見える...
ベタな展開にみえながら…「幽霊」とはなんぞや? 「幽霊の墓」(安部公房)(「安部公房全集006」)新潮社 希望を失った若い男女が自殺した。男は片足が鉄の義足だったために無事沈んだが、女は助け上げられる。幽霊となった男は、...
わからないことこそが安部公房作品の味わいどころ 「天使」(安部公房)(「題未定 安部公房初期短編集」) 新潮文庫 無限を意味する灰色の六つの、いや五つ半の面と、半分の未来とに世界は仕切られている。お解りだろうか。実の所を...
安部の思考の行く先を想像する愉しみ 「飛ぶ男」「さまざまな父」(安部公房)(「飛ぶ男」)新潮文庫 ある夏の朝、たぶん四時五分ごろ、氷雨本町二丁目四番地の上空を人間そっくりの物体が南西方向に滑走していった。月明かりを背にし...
政治家の、選挙区民に対する釈明のような 「老村長の死」(安部公房)(「安部公房全集001」)新潮社 「諸君は私を罪人だと云う。すかし一体、私が何をしたでありましょうか。私は村長として、我が最も愛す可き村人の為を思ってした...
時代に対する安部の冷めた視線 「手」(安部公房)(「水中都市・デンドロカカリヤ」) 新潮文庫 他の道はなかった。おれは「手」に向って真っすぐ走り、いくらかの肉と血をけずり取って、そのまま通り抜け、街路樹の幹につきささって...
罪悪の意識・存在の証明・故郷の喪失 「題未定(霊媒の話より)」(安部公房)(「安部公房全集001」)新潮社 一人の小ちゃな年の頃十四か五に見えるきゃしゃな人好きのする孤児がどこからか此の村に流れ込んで来た。田舎町や村々を...
死の先には、さらに深い絶望が用意されている 「時の崖」(安部公房)(「無関係な死・時の崖」)新潮文庫 ……負けちゃいられねえよなあ……勝負だもんなあ……負けるために、勝負してるわけじゃねえんだからなあ……あ、これ、昨日の...
「分からない」そして「何かに変身している」こと 「壁」(安部公房)新潮文庫 その瞬間、ぼくはもう一人のぼくの正態を見破ってしまったのです。それはぼくの名刺でした。そう思ってみれば、それはどう見ても見まがうことのない名刺で...
優しさを感じさせる文体や設定は、おそらくは罠 「白い蛾」(安部公房)(「安部公房全集001」)新潮社 船旅をする「私」は、船長に「白蛾丸」という珍しい船の名前の由来を尋ねる。船長は「私」にその経緯を語る。十年ほど前、船長...